ウィッチンケアが2020年に「一回休み」しているあいだの、ビッグニュース! 柳瀬博一さんのWEB文芸誌『yom yom』(新潮社)での連載が完結し、『国道16号線: 「日本」を創った道』として昨年11月に刊行されました。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)が16号線特集を組むなど、メディアでもたびたび話題になり、現在5刷とのこと。6月14日にはゲンロンカフェにて大山顕さん、八谷和彦さん、柳瀬さんによるトークイベント「国道16号線とポスト郊外論――地形から社会を考える」が予定されています。...それにしても、1冊にまとまった柳瀬さんの「16号線」論をあらためて拝読して、驚愕。歴史/地理/経済/政治/文化etc.を縦横無尽にクロスオーバーして語られると、私の家から2〜3キロのところを走る茫漠とした幹線道路の風景が、なんと違って見えることか!
小誌今号への寄稿作〈富士山と古墳と国道16号線〉は『国道16号線: 〜』刊行後に、柳瀬さんが自動車で「16号線エリア」を走ってみたさいの記録です。冒頭近くには、以下の文章が。「昨年11月、このウィッチンケアでもしばしばとりあげてきた『国道16号線』について、新潮社から本を出した。」「出してわかった。自分はまだこの道のことを何も知らない。」...いやぁ、知れば知るほど謎も深まっていくということなのでしょうか。とくに今回柳瀬さんが旅した千葉方面の16号線エリアは、西東京〜神奈川側の16号線エリア住人にとって心理的に遠い場所。いまは東京湾アクアライン(1997年開通)があって距離的には近いですが、20世紀の肌感覚だと富津でも熱海、いや山部赤人の〝田子の浦ゆ〜〟くらいに遠い感じがしてたかも。柳瀬さんはこの一首にも出てくる富士山、そして古墳を手がかりとして、千葉側16号線エリアの成り立ちを考察しています。
今回、柳瀬さんの寄稿作を「Googleマップつきっきり」で拝読しました。「16号線の起点に向かう。片道1車線のT字路、「富津」の看板からはじまる。その角には煉瓦色のアリス、というパン屋さんがある。残念ながら休みだった。チョココロネがおいしいのだが」とあれば、即ググる。ほんとだ、「やさしいおいしさ手づくり パン」というノボリが! みなさんもぜひ、小誌&スマホ(PC)で柳瀬さんの旅を追体験してみてください。
確実にいえることは、かつて貝塚があった千葉の16号線沿いの海岸近くのエリアは、田んぼ文明が定着し、巨大な古墳がいくつもつくられるほどの人口と技術を兼ね備えた集落があった、ということだ。
そこに暮らす人々にとって、古墳をつくる仕事に参加することと田んぼをメンテナンスすることは、どちらも「日常」になっていたのかもしれない。為政者は、古墳づくりに参加することをインセンティブにしたり、案外お祭りにしていたのかもしれない。
そこに暮らす人々にとって、古墳をつくる仕事に参加することと田んぼをメンテナンスすることは、どちらも「日常」になっていたのかもしれない。為政者は、古墳づくりに参加することをインセンティブにしたり、案外お祭りにしていたのかもしれない。
〜ウィッチンケア第11号〈富士山と古墳と国道16号線〉(P126〜P133)より引用〜
柳瀬博一さん小誌バックナンバー掲載作品:〈16号線は日本人である。序論 〉(第5号)/〈ぼくの「がっこう」小網代の谷〉(第6号)/〈国道16号線は漫画である。『SEX』と『ヨコハマ買い出し紀行』と米軍と縄文と〉(第7号)/〈国道16号線をつくったのは、太田道灌である。〉(第8号)/〈南伸坊さんと、竹村健一さんと、マクルーハンと。〉(第9号)/〈海の見える岬に、深山のクワガタがいるわけ〉(第10号)
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