2021/05/08

volume 11寄稿者&作品紹介08小川たまかさん

 小誌第4号からの寄稿者・小川たまかさん。これまでは小説形式の作品を受け取ってきましたが、今回は〈トナカイと森の話〉と題したエッセイでした。拝読しながら私は、なんだか直接お目にかかって話をしたときのように言葉が伝わってくるなぁ、と感じていました。小川さんの文章はネット上にも多々掲載されていまして、日頃はたとえば《Yahoo!ニュース個人》のような記事スタイルのものに接することに慣れているのですが、扱うテーマは「性暴力」「ジェンダー」などであるものの、今作は自分語り的なせいか、脳というより心臓のほうにじわじわ効いてくる一篇。だからなのかな、お人柄の優しい部分と厳しい指摘とのバランスが、個人ブログがベースだった著書『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』よりもさらに〝声〟に近い印象を残します。

朝井麻由美さんの紹介時にも書きましたが、私は世代的に「昭和男子のなれの果て」。昨年映画「天気の子」がテレビで放映されたのを観て、ロケーション(代々木会館)がオマージュになっている「傷だらけの天使」もひさびさにアマゾンプライムで観てみました。若き日の萩原健一と水谷豊はあいかわらずかっこよかったけれども、しかし物語の背景である「昭和の社会構造」には胸がざわついてしまった。あっ、3月にはマスクをしっかり装着して「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」を観賞してきまして、こちらもひさびさにDVD(個人録画)のアニメ版「新世紀エヴァンゲリオン」を観てみました。シンジ君はあいかわらず情けなかったけれども、しかし物語の背景である「平成の社会構造」(設定は「西暦2015年」だけど)にも、胸がざわついてしまった。...ざわつくってことは、つまり心当たりがあるわけで。今年2月にメディアで騒動となった森会長の言動はとんでもないんですが、でも私の内部にも「森喜朗さん的なるもの」は存在しているのだと思います。

作中ではいま活躍している20代の芸能人の、「森騒動」に対するコメントにも言及されています。小川さんの見立てを私なりに理解するに、この件はいわゆる老害問題/世代間問題/男・女差の問題とかではなく、社会構造の問題だと(...それにしても「わきまえる」って嫌な言葉)。ええと、私の理解が合っているのかどうか、ぜひ多くのかたに読んで確かめていただきたく存じます。タイトルから連想して「クリスマスの楽しい話?」なんて、早とちりなどしませんように〜。



さすが医大の女子受験生一律減点が明らかになっても「女は体力ないんだからしょうがないよね」って声がデカく響く社会。日本の最大のタブーは「日本には女性差別がありまぁす!」と口にすることだろう。だから男女平等を男女共同参画と言い換える。女性差別撤廃とは口が裂けても言わずに、多様性が大事、全ての人の人権が大事と言い始める。

ウィッチンケア第11号〈トナカイと森の話〉(P044〜P050)より引用

小川たまかさん小誌バックナンバー掲載作品:〈シモキタウサギ〉(第4号)/〈三軒茶屋 10 years after〉(第5号)/〈南の島のカップル〉(第6号)/〈夜明けに見る星、その行方〉(第7号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈強姦用クローンの話〉(第8号)/〈寡黙な二人〉(第9号)/〈心をふさぐ〉(第10号)

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Vol.14 Coming! 20240401

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