2021/05/02

volume 11寄稿者&作品紹介02長谷川裕さん

TBSラジオのプロデューサー・長谷川裕さんとは、一昨年5月に紀伊國屋書店新宿本店で開催された「武蔵野レアグルーヴ~いま、〝武蔵野〟を再発見する~」というイベントで初めてお目にかかりました。登壇者に矢野利裕さん、宮崎智之さんのお名前があったことはもちろんですが、万年神奈川扱い(!?)されている「東京都町田市」の住人として、「武蔵野」(あるいは「多摩」)といった行政区分ではない《括り》に興味を惹かれまして...いやぁ、いろいろ認識が新たになる有意義な催しでした。そして「文化系トークラジオ Life」の〝黒幕〟としても知られる長谷川さんの話には、北多摩エリアの文化や自然に関する造詣の深さが滲み出ていて、いつか小誌に寄稿をお願いしたいなと密かに思ってしまったのでした!

寄稿作〈アマウネト──Kさんのこと〉は語り手である「私」の子供のころの記憶を、いまの言葉で残した一篇。昭和五十八〜五十九年にかけて何度も大雪が降ったことの記憶。当時の中央線沿線での生活の記憶。祖父を見舞った記憶。家族の記憶。そして、Kさんという女性との記憶。当時小学3年生だった「私」とKさんとの(家族を含めての)微妙な距離感を、記憶に刻んだ些細なエピソードをたぐり寄せながら記しています。個人的にはメロンにまつわる箇所での、Kさんと「私」とのやりとりが心に重く響きました。世の中には「良い/悪い」「正しい/間違っている」みたいなものさしでは測れない事情っていうものがごく普通にあって、それに遭遇してしまった子供の「私」には、「わかる」ための長い時間が必要だったのだな、と。

作品の冒頭近くには、雪にまつわることで「一応、東京都とはいえ、やはり多摩地域は都心とは別のエリア」との一節もあります。寄稿者の長谷川さんは武蔵小金井在住。そうか、小金井市なんて町田市からすると「杉並区のちょっと先」ぐらいにしか思えないのに、それでも積雪具合が違うのか! と、軽い驚きも(町田...そりゃ多摩川を渡ってからのかなり先だから、東京と気候が違うよな)。やっぱり「武蔵野」括りより「川崎/相模」括りのほうが、町田には似合う?



 その年の冬は長引き、3月になってもまだ雪が降った。ようやく遅い春が訪れた頃、祖父は都心の大学病院から自宅に近い多摩地域の病院に移った。夏は打って変わって猛暑がつづき、祖父の容体は急速に悪化していった。病室の空気が重くなるにつれて私が見舞いに行く機会も減った。そのせいか、この頃にはKさんと会った記憶がない。

ウィッチンケア第11号〈アマウネト──Kさんのこと〉(P012〜P016)より引用

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Vol.14 Coming! 20240401

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