2017/05/17

vol.8寄稿者&作品紹介18 小川たまかさん

小川たまかさんの今号寄稿作のタイトルにある「強姦用クローン」とは...作内の最初のほうにある説明箇所を引用してみましょう。<身内を強姦された研究者が作り出したクローンで、性加害傾向を持つ人の前に現れる。加害者はそのクローンを見ると襲わずにはいられない>。それで、この一節を読んで、あなたはどんなビジュアルのクローンを思い浮かべましたか? えっ、私ですか? ...もし真っ新な状態でこの一文に出くわしたら、たとえばキューティハニーのような...ですかね。

Yahoo! で小川さんの記事に接する機会が増えました。現在(2017年5月中旬)70弱の記事が閲覧可能ですが、性犯罪に関するものが多くあります。ライターである自身の重要なテーマとして、小川さんはこの問題に取り組んでいる──そう私は認識しています。杓子定規に語れないテーマなので、ときにはコメント欄が荒れたり、議論があさっての方向に暴走したり。

昨年の冬、小川さんと原稿の打ち合わせ。Yahoo! の反響やSNSの話もして、「伝えようとして言葉を重ねてもなかなかむずかしい」みたいなこと...併せて、「記事(ノンフィクション/ジャーナリズム)のスタイルで伝わらないことが、たとえば物語(フィクション/小説)のスタイルだとわかってもらえる(伝える、とか理解される、とかと微妙に違う?)ことがあるかもしれない」みたいなことを話し合いました。じつは、すぐ近くの席で吉本ばななさんと松田青子さんが対談している(偶然)、というひじょうに気が散っちゃう状況だったのですが〜(泣笑)。

今回の寄稿作は、そのときの話を踏まえて小川さんが書き上げたもの──そう私は認識しています。最初のテキストを拝読した段階で、私なりの意見も申しました。そのときに痛感したのは、私におけるところの高度な〝既成概念浸食され度〟とか、あとは、なんだな、表現のスタイルは千差万別だよな、みたいなことも、あらためて(個人的には今作を通じていくつもの気づきがありました)。いまは発行人として、さまざまな立場の人に本作を読んでもらいたいと願っています。どうぞよろしくお願い致します!



 これまでクローンに性的加害行為を行った者は、相手がクローンだったとは気づいていない。その時点で、人間に対する加害行為を行ったと同じではないのか。確かに被害者はいない。しかし加害的精神だけではなく加害行為もそこに確かに存在したのだ。それが見過ごされていいのだろうか? 「強姦用」クローンを「強姦用」クローンと知らずに「強姦」した者は、人間にも性的加害行為をする可能性があることは言わずもがなであるばかりか、加害行為を行ったその個人において既遂と変わらないのではないか? だってクローンだと気づいていなかったのだから。

ウィッチンケア第8号「強姦用クローンの話」(P110〜P115)より引用
https://goo.gl/kzPJpT

小川たまかさん小誌バックナンバー掲載作品
シモキタウサギ」(第4号)/「三軒茶屋 10 years after」(第5号)/「南の島のカップル」(第6号)/「夜明けに見る星、その行方」(第7号)
http://amzn.to/1BeVT7Y

Vol.14 Coming! 20240401

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