2019/05/20

vol.10寄稿者&作品紹介17 多田洋一(発行人)

ああ、今号でもまた、どなたかに拙作の紹介文をお願いしようかと迷っているうちに時が過ぎ、自分で書くことになってしまった。過去、第6号に掲載した〈幻アルバム〉(←これはいますぐ《note版ウィッチンケア文庫》でも読めますよ!)のときだけは、早め早めに三浦恵美子さんにお願いして、それはとてもよい体験だったのですが。そうだ! 今春は「マガジン航」への寄稿も経験しまして、そこではウィッチンケアの創刊理由のひとつが“いわゆる「持ち込み原稿」というのを某文芸誌にしてみたものの、散々な言われよう”ともコクりましたので、もはや褒められようとけちょんけちょんに言われようと、ハートの準備はできている、との心構えでして...とにかくみなさま、スルーだけはしないでね。そして、読んだらなにか言ってください。とにかく、「豪華な執筆陣ですね...あれっ!? 多田さんもなにか書いてたっけ?」だけは勘弁してください。

今作は「なにしているのかよくわからない年配男が新橋近辺をうろうろしてる」という内容。ここから先は自分の「書きかた」について少し語ってみます。とにかく「なにを具体的に書いてなにを具体的に書かないか」だけは、自分なりに細かく考えて書いています。たとえば「なにを具体的に書かないか」については、文中で“これは何年何月の話”と明記していませんが、日本テレビのビルのエスカレーターに貼ってあるテレビドラマのポスターには藤ヶ谷大輔さんが大きく写っているとは書いてあって、年配男はこの時点で“あいつか、「美男ですね」の瀧本美織ちゃんのギタリスト”と2011年7月からのTBSドラマのことは知っているけれど、でも、2015年に発覚した藤ヶ谷さんと瀧本さんの熱愛報道は知らないから、そうするとこのポスターのドラマは2013年7月7日から9月29日に放映された「仮面ティーチャー」が濃厚だろう...でっ、他の箇所に「暑いな、今日は」なんて記述もあるので、そうか、2013年の初夏の話なんだろうだな、とわかるように(ちなみに観月ありささんは「斉藤さん2」のポスター)。瀧本さんには(もちろん好きな女優さんですが)、本作ではこの時期特定のためだけに、必然性があって登場してもらいました。そんな細かくなんて誰も読まないから、たとえば冒頭に「2013年の初夏」とかもったいぶらずにはっきり書きゃいいじゃないか! という意見もあるかと存じますが、しかしそういう書きかたはしたくなかったし、それに細かく読まれた場合のことはいつも考えていたい、と思います。なので、いずれ誰かが「この販促物もらいにいった会社は○○○だね」と言ってくれること、信じて!

「なにを具体的に書いて」のほうは、これは私の小誌での立場的に「誰もおまえを諭すものはいない」なのがアキレス腱かもしれない、と危惧しつつも、けっこう気持ちよく暴走しています。冒頭近くの“銀座線を降りて直久を横目で見て、天井とワゴンショップの圧が強い通路を早足に進んだ”の時点で、すでに「直久」がなんだかわかってもらえなかったらもう読み飛ばされるかも、と怯えつつ、それでも先に進んじゃう。“天井とワゴンショップの圧が強い通路”...そうだよね、銀座線を降りて新橋駅前ビル側の地下通路を汐留のほうへ歩いてると天井は低いし怪しいものが並んだワゴン売りが邪魔で圧迫感あるよね〜、と共振してくれる読者がいる、と信じて!



 あの年は正月早々に友だちの附属高校時代の同級生がからんでいたディスコの照明が落ちたりして、こんな浮かれ気分はそういつまでも続くもんじゃないだろうとみんなが予感しつつも、でもその時点で手に入れていた生活を変えられなくなっていたのだと思う……って、「これから」にまぜてもらいたくないかのような過去の遺物による感慨ですが、はて、いったい自分はどこを境に口をつけば昔話ばかり、になってしまったのだろう、とも思うが……でも、まあいいか。なんだかそう遠くないうちに、昔話さえできないふわふわした生命体に自分がなってしまいそうな予感もしているので、まあいいか。思い切り、昔話に振ってみる。

ウィッチンケア第10号〈散々な日々とその後日〉(P100〜P108)より引用

多田洋一(発行人)小誌バックナンバー掲載作品
チャイムは誰が(第1号)/まぶちさん(第2号)/きれいごとで語るのは(第3号)/危険な水面(第4号)/萌とピリオド(第5号)/幻アルバム(第6号&《note版ウィッチンケア文庫)/午後四時の過ごしかた(第7号)/いくつかの嫌なこと(第8号)/〈銀の鍵、エンジンの音〉(第9号)

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Vol.10 Coming! 20190401

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