2019/05/06

vol.10寄稿者&作品紹介06 トミヤマユキコさん

今号で初めてご寄稿いただいたトミヤマユキコさん。今年3月に上梓された『夫婦ってなんだ?』刊行記念イベント(at 下北沢の本屋B&B)での、武田砂鉄さんとの対談でも、楽しいエピソードのなかにときおりピリッとした時評が挟まれるのが印象的でした。ええと、そもそもの話をしますと、私は短くもなくトミヤマさんの密かな(一方的)ファンでして、昨年の夏、そのトミヤマさんが早稲田大学の騒動で学生に配慮したツイートを早い時期にしたり、かと思うとTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で圏外ファッションについてはじけたトークをしたり...なんか、すごい人だな、との思いを強くしておりました。同時期、私が運営協議委員を務めている町田市民文学館ことばらんどでは「みつはしちかこ展」開催のための企画が進んでいて、その関連イベントとして少女マンガをテーマにした催しを、ということになり、細かい経緯は省きますが、とにかく11月23日、同館にて「〈かわいい〉のその先に-70年代・80年代少女漫画序説」というテーマでのトミヤマさん、少女まんが館館主の中野純さん、大井夏代さんによる鼎談と茶話会が実現。そのさいに寄稿依頼をして、よいお返事をいただいたのでした(トミヤマさんの鼎談出演については、共著のある矢野利裕さんがご縁をつないでくださいました)。

トミヤマさんはマンガの研究者(労働系女子マンガ研究が専門)。少女マンガ、女性マンガ、そして数年前からはいわゆるBLモノも読むようになったが、泣けるほどおもしろくても、なぜか「萌え」の感覚がわからなくて、そんな自分自身を考察してみたのが、今回の寄稿作〈恋愛に興味がないかもしれない話〉です。萌え...この言葉は私が30歳を過ぎてから世間的に広まった概念でして、私も最初はどういう感覚なのかピンとこなかったんですが、でも、じょじょに「そうか! あのもやもやっとした感覚なのか」というくらいには体感できていたので、専門家であるトミヤマさんが「萌えない」と書いていること、かなり衝撃を受けました。しかし、読み進めると自身の考察はさらに深まり、表題のような展開へと!

後半に出てくる岡田准一に関する逸話....やっぱりトミヤマさんはすごい人、と再認識しました。とてもきちんとした部分と独自の世界観がご本人のなかに無理なく両立していて、それは最初に書いた「早稲田の学生さんを思いやる気持ち」と「圏外ファッションではじける感じ」が、トミヤマさんにとってナチュラルな振り幅の範囲内にあることにも、似ているのかな!? とにかく、『夫婦ってなんだ?』を楽しんだかたにも、ぜひ読んでいただきたい一篇です。



 残念なことにわたしはナチュラルボーン腐女子ではなく、BLに「萌える」という感覚がよくわからない。男同士の恋愛に抵抗感や嫌悪感があるわけではないし、おすすめされればなんだって読むし、腐女子の諸先輩方とお喋りするのも大好きだ。でもなぜか萌えない。そのことはわたしの中で、密かなコンプレックスだった。だって、マンガを仕事にしているのにBLに萌えないなんて、なんだか悔しいじゃないか。
 あるとき、BLをこよなく愛する腐男子の先輩から中村明日美子先生の『同級生』シリーズをおすすめされた。お前さんは萌えない萌えないと言っているが、中村明日美子先生を読んだのか。読んでないだと。それはいかん。BLの入門書と言えば『同級生』だ。これを読めばきっと萌える。というようなことを先輩は言った。

ウィッチンケア第10号〈恋愛に興味がないかもしれない話〉(P034〜P037)より引用

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Vol.14 Coming! 20240401

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