今年2月に発売された『STARBUCKS OFFICIAL BOOK』ではライターとして前半部の旅ページや上海店取材、インタビューページなどを担当した藤森陽子さん。同月には『ブルータス』編集部監修による、東京の名作菓子を集めた「スウィーツ」というグリーティング切手(日本郵便)も発売されまして、こちらでは藤森さん、同編集部スタッフ側としてお菓子のセレクトとイラストの元になる写真撮影を担当した、と(日本郵便専属の切手デザイナーと同行で、東京中を駆け回ったらしい)。ええと、藤森さんは長らくマガジンハウスの諸雑誌での仕事を手がけていますが、その藤森さんをして「切手の仕事は(部数が)ケタ違い」と...刷り部数が300万シート/3000万枚って、新聞の主要全国紙全部合わせても勝てない? テレビなら視聴率20%後半(「世界の果てまでイッテQ!」とか/オレが現在唯一毎週観ている「いだてん」の3倍...)クラスのお仕事。わはは、そんな藤森さんのエッセイが読めるのも、刷り部数1000のウィッチンケアならでは。あっ、3000万枚の切手は売り切れ寸前だそうですが、小誌はまだ楽々入手できますよ(...頑張れ!)。
思い返せば藤森さんとは創刊号以来のおつきあいでして、記念すべき第1回の寄稿作タイトルは「茶道楽の日々」。その時点でもうすでに台湾茶やそれにまつわる諸々のことを書いていて...なんと、この10年で「道楽」どころか、もうしっかりその道のエキスパートではないですか! そんな藤森さんが今号で紹介しているのは台湾の伝統的なデザート・豆花(ドゥファ/トウファ)。作中では「いわば豆乳プリンのようなもの。豆花自体に甘みはなく、それを黒糖で作った湯(スープ)や豆漿(豆乳)、冬であれば生姜味の甘いスープに浸して食べる。夏はアイスもいいけど、冬はだんぜん熱々のホットに限る」と説明されています。ネット上でもお洒落な人々が注目し始めていますが、これは、くるな(藤森さんの推しは、これまでもみんな「きた」しw)。
仕事での原稿だったら、きっと「流行の兆しを見せている豆花とは、云々」といった内容になったでしょう。しかし、小誌ではそんなふうに読者を想定する必要がありませんので、どうぞ自由にのびのびと。私はいま台湾にいておいしい豆花を食べているのだ、ということ。そして、そのさいに抱いた雑感などをシンプルにしたためてもらいました。その結果...なんだ、これを読んだら、誰だって1度食べてみなきゃ、と思わずにはいられない、インフルエンシヴ(!?)な名随筆になりました。みなさま、ぜひ小誌を手にとって、豆花ワールドの門を叩いてみてください!
思うに、台湾の甜品=甘味はスープもトッピングも甘さが軽いのがいい。自分は日本の「餡」文化を愛しているし、職人の技術と情熱を尊敬してやまないけれど、日本のお汁粉やぜんざいはちょっと甘過ぎる時がある。よそ行きというか、〝リッチ過ぎる〟のだ。台湾の甘味はうっすらとした甘さで最後まで飽きずにザクザク食べられて、このラフさと日常感が、何というか、ちょうどいい。大豆をしぼり、何十種類ものトッピングを仕込むあの仕事量で、どんぶり一杯三十元〜五十元(約百二十円〜二百円)という価格帯も、感動せずにはいられないのだ。
ウィッチンケア第10号〈らせんの彼方へ〉(P198〜P200)より引用
藤森陽子さん小誌バックナンバー掲載作品
〈茶道楽の日々〉(第Ⅰ号)/〈接客芸が見たいんです。〉(第2号)/〈4つあったら。〉(第3号)/〈観察者は何を思う〉(第4号)/〈欲望という名のあれやこれや〉(第5号)/〈バクが夢みた。〉(第6号)/〈小僧さんに会いに〉(第7号)/〈フランネルの滴り〉(第9号)
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Vol.14 Coming! 20240401
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