2019/05/30

vol.10寄稿者&作品紹介34 仲俣暁生さん

今年の1月末、ニュースで橋本治さんの訃報を知ったとき、「ああ、仲俣さんはどんなに悲しいことか」と頭を過ぎりました。というのも、昨年12月に仲俣暁生さんが上梓した『失われた娯楽を求めて 極西マンガ論』では「夢見る頃を過ぎても 少し長いまえがき、あるいは私的マンガ遍歴」(以下「まえがき」)でも「あとがき」でも橋本治に触れられていて...少し引用すると「十代の終わりの頃、私はマンガ評論家になりたい少年だった。〈中略〉きっかけは、橋本治の『熱血シュークリーム』という本だと思う(名高い『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』ではなく)。」【「まえがき」より】、「本書は橋本治が未完のままにしている『熱血シュークリーム』という少年マンガ論への、彼から多大な影響を受けた後継世代からのオマージュでもある。」【「あとがき」より】と。そして、なによりも同書のタイトル。「あとがき」には収録されている安野モヨコ論の題名からとった(「橋本治の『花咲く乙女のキンピラゴボウ』所収の倉多江美論が「失われた水分を求めて」だったことにもあとから気がついた」とも)、と記されていますが、橋本治の文学論「失われた近代を求めて」シリーズとの関連も、自然に想像できてしまう...。

仲俣さんは「週刊読書人ウェブ」に《橋本治がいなかった「平成」》という一文を寄稿、またツイッターでは〝【橋本治さんに捧ぐ】2010年の「ユリイカ」の特集号のために書いた橋本治論を、追悼の意を込めて〟と告知し、《1983年の廃墟とワンダーランド――橋本治という未完の「小説家」について》をnoteで無償公開しました。...なにしろ、膨大な著書のある橋本治。私的には、うちの限りある本棚の一画はもう四半世紀以上分厚い『'89』に占められている/『窯変 源氏物語 』第一巻は海外旅行に携帯してむさぼるように読んだ/映画『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』で派手な柄のセーター着てた喫茶店のマスター役インパクト強すぎ、等々...最近の本は、SNSで仲俣さんが紹介してくれて、触発されて読んでいた。

小誌今号にご寄稿くださったのは、橋本治さんに対する、仲俣さんの個人的な思い出を綴った追悼文。このような一篇を掲載できる場所、として小誌があったこと、発行人として嬉しく思います。作中の、雑誌というものに対する橋本さんの考えかた、とくにインタビューに関する「決定的な一言」のくだりなんて、あまりの臨場感で涙腺がシビれてしまいましたよ! 橋本治を好きな人だけでなく、雑誌に関わる多くのかたに、ぜひ読んでもらいたいと強く願っています。そして、そして、仲俣さん。昨年6月の〈ウィッチンケアM&Lな夕べ 〜第9号発行記念イベント〜〉では共同主宰、また第10号刊行後には「マガジン航」への私の寄稿のさい、適切なアドバイスをいただきまして(小誌でとは真逆の関係/編集者・仲俣さんと接してその敏腕さに脱帽...)、あらためて感謝致します!



 橋本さんの言葉が刺激になったのだろう。私はその後、この雑誌で自分の責任で書く小さなコラムをはじめた。わずか数百字の小さなスペースを自分ひとりの解放区にした。さらに書評のコーナーを作り、他の編集部員と本を選んで自由に紹介した。
 それでも私は、自分がいつか「物書き」になるなどということは、少しも考えていなかった。ただ、雑誌をつくることの面白さが、自分でもそこに文章を書くことによってやっと実感できるようになった。自分のつくる雑誌の「声」になりたい。当時の私は、ひたすらそう思ったのだった。
 この雑誌をふりだしに、以後、いくつかの雑誌編集部を経験した。企画を立て、外部の書き手に依頼して原稿を集めるだけでなく、どの雑誌でもかならず自分で書くようにした。「書くこと」と「編集すること」は、自分のなかで次第に同じことになっていった。
 インタビュー記事の作成も、仕事として外から求められる場合を除き、あまりしないようになった。人に話を聞くのは、それを通じて書き手が「自分の言葉」をつくるためであって、他人の言葉をそのまま伝えるのは別の仕事だ。そのことがよくわかったからだ。

ウィッチンケア第10号〈最も孤独な長距離走者──橋本治さんへの私的追悼文〉(P202〜P205)より引用

仲俣暁生さん小誌バックナンバー掲載作品
父という謎(第3号)/国破れて(第4号)/ダイアリーとライブラリーのあいだに(第5号)/1985年のセンチメンタルジャーニー(第6号)/夏は「北しなの線」に乗って 〜旧牟礼村・初訪問記(第7号)/忘れてしまっていたこと(第8号)/大切な本はいつも、家の外にあった(第9号)

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Vol.10 Coming! 20190401

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