三浦恵美子さんの今号寄稿作は、私のなかの「ドラえもん不在問題」をあらためて考えるよいきっかけになりました。というのも同作、かすってもないんです。wiki見ると1970年1月号の学年誌(「小学一〜四年生」など)にて連載開始なんですね。私、その年小4でしたがもう学年誌読んでなかった。...っていうか藤子先生はオバQやパーマンで“卒業”しちゃって(小池さん!)、1968年(昭和43年)1月1日号から「少年マガジン」に連載された「あしたのジョー」に夢中だったような(第1回から読んだ記憶あり/「巨人の星」はもう甲子園大会あたり?)。
野比のび太君とはほぼリアル同い年で「ドラえもん」もちらっとは読んだはずですが、共振しなかった。空き地でジャイアンとではなく、四角いジャングルで力石徹と闘わなければ、と(マンモス西になってはいけない、と)。<和室の真ん中に布団を敷いて寝る>子供部屋の住人でしたが、部屋に四次元ポケットのあるネコ型ロボットがきて友だちになってくれたら、って発想は皆無で、早く強く(身体大きくなることも含め)なり家を出たかった。源静香ちゃんも全然で、さすがに白木葉子さんは怖かったけど、林紀子や春日野すみれや大柿キク子(ちがうマンガ混入)のほうが...。いや、こんな感じなので三浦さんが<永遠の子供時代の中に棲息する「ドラえもん」の方が、ある意味では決定的な異端>と書いてくれてむしろほっとしているのですが、まあ、あの頃の日本の子供みんなが「おれはジョー」だったら、危険な社会過ぎる!?
寄稿作の後半で三浦さんが<ドラえもんの〝なれの果て〟にも見える「異生物」>としている輩の存在のほうが、私にはすっきり理解できました(「デスノート」は未見ですが「寄生獣」はある時期まとめ読みしたことあり)。<「ドラえもん」と「死神リューク」「寄生生物ミギー」で共通する点もある。「全能」である点>という指摘がありますが、「ドラえもん」はともかく、高校生くらいになると男子は「理想の自分(必ずしも優秀や善ではない)」と「現実の自分」に割れてきたりもしますから、自己内対話では「理想の自分」のほうには全能でいてもらいたいかも。また「ドラえもん」が万人の目に見えて違和感ないのにリュークやミギーが<他の人の目には見えない、本質的に〝不吉な〟存在>なのは、けっこう「小学生だったらお風呂から裸で出てきて扇風機にあたりそうだけど、さすがに高校生(もう子供とするには不吉なフィジカル)は...」みたいなことのメタファーだったらどうしましょう?
私はむかしもいまも女の子が不思議ですが女性から見た男の子もまた不思議な存在だということが少しわかりました。大人になると「同じ人間」というものさしで測ることが多くなるので...あっ、でも最近はいくつになっても「女子」「男子」の話が盛んで(子供のまま延長戦かw)。それにしても「ドラえもん」がなぜ国民的マンガにまでなったのかはよくわかりません。三浦さんは<原型は、子供が大切にしている人形や、ぬいぐるみや、ペットの動物なのだろう>としていますが、男の子(というキケンな存在)って、ぬいぐるみやペット、必要? というか、のび太君とロボットの関係より、金田正太郎と28号ならすごくよくわかる(また混入...)。
作者の藤子・F・不二雄は、たまたま家にあった赤ちゃん向けのおもちゃ、だるま型の大きな目をした赤いセルロイド製のおきあがりこぼし(昭和中期まではごく身近にあった!)、あの赤ちゃんが揺らすとからんころんと優しい音を鳴らす子守りおもちゃからドラえもんを発想したとどこかに記していたが、確かにドラえもんは優しい。「癒し系」だ。それでいて「全能」である! 窮地に陥る度にドラえもんの「ひみつ道具」に助けを求めることになるのび太くんにとって、異生物としてのドラえもんは、とどこおりなく日常を生きるために欠かせない、自らの欠損を埋めるための必需品としての「パーツ」である。逆に言えば、ドラえもんという一片が欠けたとき、のび太くんの平穏で幸福な小宇宙は瓦解する。
原型は、子供が大切にしている人形や、ぬいぐるみや、ペットの動物なのだろう。しかし、そのトランスフォーメーション先としての、ドラえもんに似た異生物というものは、日本の外にもいるのだろうか。
子供部屋に潜み、あるいは子供部屋を頻繁に訪れ、子供と一緒にその生を生きる、彼らにとってはなくてはならない〝相棒〟としての、異世界の生き物。(家族や友達や「人間」であってはならない。)
ウィッチンケア第6号「子供部屋の異生物たち」(P164〜P171)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1
cf.
「〈TVガーデン的シネマカフェ〉試案」
Vol.14 Coming! 20240401
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