さて、小誌第2号からの寄稿者であるかとうさん。ここ数号ではかなり奔放な筆致で男女の綾を描いておられまして、今回のタイトル〈わたしのほうが好きだった〉からすると、なんか、男子の優柔不断さをびしばし叩いてきたしっぺ返しでも「わたし」がくらったのか、なんて、これまでの続編のようなことを想像して読み始めたのですが、これが、ちがった。重要な登場人物「中里さん」は、どうやら同性の友達のようです。ここで思い出されるのが谷亜ヒロコさんも友達にまつわるくだりのある寄稿作を書いていたことでして、ほんと、その方面には私には窺い知れない世界があるのだなぁ、と。あと、サベックスとプチトマトの取り合わせがなんとも色彩的にキュートだと思いました。
物語の最後に登場するクレジットカードのエピソードは、ものすごく他人事じゃなく共感しました。私も同じような経験があり、しかも善人(←気弱ともいうw)だった私は断り切れなかったせいで散々な目に遭い、しかもたぶん相手はそのことを覚えてなくて四半世紀後に某SNSで「友達」申請してきやがって...ここぞとばかりに“仕返し”しようかとも思ったんですが、けっきょく「友達」になって。って、なにをよくわからないことを、と感じたみなさま、ぜひ小誌を手にとってかとうさんの作品を読んでみてください!
「就活してないって、これからどうするつもりなの」
「ずっと遊んでいられるわけ、ないんだからね」
「まったく、あんたは」
クラス単位の必修があるのは1年だけだったし、中里さんにもそのうちごはんを食べるともだちが数人できたから頻度は減ったのだけれど、それでも週一くらい、会えばいちおう一緒にごはんを食べていたとおもう。4年になってからは、文系のわたしたちはそこまで大学に行く必要もなかったし、わたしはここぞとバイトや旅行ばかりしていたから、中里さんと会うのは久しぶりだ。
就活を機に雰囲気ががらりとかわるひとたちの多い中で、中里さんは最初に会ったときから、ほとんどそのまま。ショートボブの髪型も黒髪も、地味な服装も。いつリクルートスーツに着替えても違和感なさそうなんだけど、面接にはてこずっているようだった。
かとうちあきさん小誌バックナンバー掲載作品〈台所まわりのこと〉(第3号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈コンロ〉(第4号)/〈カエル爆弾」(第5号)/〈のようなものの実践所「お店のようなもの」〉(第6号)/〈似合うとか似合わないとかじゃないんです、わたしが帽子をかぶるのは〉(第7号)/〈間男ですから〉(第8号)/〈ばかなんじゃないか〉(第9号)
【最新の媒体概要が下記URLにて確認できます】
https://bit.ly/2GSiNtF
【BNも含めアマゾンにて発売中!】
http://amzn.to/1BeVT7Y