吉永嘉明さんの今号への寄稿作は、これまでの3作品と少し違うな、と感じました。以前は自身の過去を踏まえ、若いころの物語を書いていた?...でも今作は、ここで語られていることがウソかマコトかは存じ上げませぬが、とにかくリアルタイムの「ヨッシー」なる人物が登場しています。
「ジオイド」「ブルー・ヘヴン」では、主人公(語り手)が破天荒な生活をしていました。「タンポポの群生」でも、奥さんにからみっぱなしの、素行に問題がある男の話...しかし今作の、「ヨーちゃん」に対する語り手の接しかたの、なんとジェントルマンなこと。私は「今どきのJKちゃん」なんて町で見かけたことしかないのでよくわかりませんが、作品を読むと、この2人って友達関係!? そして文体もある種の“軽み”が漂っているようで、私はマーヴィン・ゲイの「Midnight Love」というアルバムを初めて聞いたときのような印象を受けました。ポコポコいってるだけなのにディープな「Sexual Healing」が大ヒットした。
「ポケットの中には」のお原稿(ノートに書いたもののコピー)は、〆切をだいぶ過ぎてクロネコ@ファックスで受け取りました。最初の2作はWord。添付書類がメールで届いたのですが、前作から手書きになり、今回はそれも果たして届くのか、とヒヤヒヤだったのですが...あっ、吉永さん、そのいきさつまで作品内に反映させてる(参りました!)。
現在はPCの設定がうまくいかずネットなしの環境で生活している吉永さんですが(携帯電話とショートメールのみ、とか)、私はわりと、吉永さんとネットって相性がいいと思うんですけど、ね。JKちゃんと心が通じ合うヨッシーさんのように、いつの日にか吉永さんが、オンラインデビューすることをじつは密かに願っているので、ここを読んだ知り合いのみなさまも、ぜひぜひオススメしてみてください!
私は10年前に妻に死なれてから9年間、鬱病をやって何もしなかった。1年前に自力で鬱から脱却し、小説を書き始めたが、いいものが書けない。数人の信頼する編集者や親友を除いて、すべての友人や仕事関係者、家族は鬱の期間に離れていった。
ついに最近は、親友にも会わなくなり(合わせる顔がないのである)、時々心配してメールをくれる(鬱になってからつき合った)元彼女にもリターンをしない始末。誰も必要としない、誰にも必要とされない状態で、いい作品を書こうとしていた。
そんな日々で会う人間といったら、生活のためのバイト仕事で出入りしている雑誌編集部で顔を合わせる女子高生(こう書くと編集者にJKと直される)。ファッション誌のモデルたちだけなのだった(私は50歳である)。
何故か、この仕事はスイスイできた。小説と違って求められる水準がはっきりしているからかもしれない。
もちろん、最初は今どきのJKちゃんの内面を知ろうと努力した。何しろ最初に彼女たちに言われた台詞が「吉永さん、気持ちいいことしてあげようか?」だった。こういう時は絶対、もじもじしてはいけない。「あー、そう、嬉しいねぇ」と即座に答え、肩など揉んでもらえばいいのである(私は一体、何やってんだ?)。やがて彼女たちとしごく打ち解けて、仕事が終わるとお茶や食事をしながら話し込むようになった。そうしてみると、彼女たちが近い世代以外のカルチャーにとても無知なことに驚いた。
ヴィヴィアン・ウエストウッドを着ているくせにセックス・ピストルズさえ知らない。そこでお互いのカルチャー交換が始まった。私がドゥルッティ・コラムのCDを渡すと彼女たちが西野カナ(カナちゃんと言わないと怒る)をくれるという塩梅。ここで彼女たちの〝興味あるもの〟を探す情熱の凄さに驚いた。
「ヨッシー(いつのまにかこう呼ばれるようになった)、ロボコップ観た?」
「ああ、リメイクね。観てない」
「観なくていいよ」
「そうなんだ。でも、昔のやつはおもしろいぜ。すっげえ暗いけど(私も少々若い言葉で話す)」
「えー? どんなとこが?」
「ニイニイニイニイニイ、バーン」
「何それ?」
ウィッチンケア第5号「ポケットの中には」(P204〜P208)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401
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