前号では友人・秋田しづかさんの町田市議選の顛末記をご寄稿くださった宇野津暢子さん。フリーランスのライター/編集者として活躍しつつ、ご自身が発起人となり、2015年4月から東京都町田市玉川学園地域のコミュニティペーパー「玉川つばめ通信」を発行しています。「えっ!? 町田って神奈川じゃないの?」でおなじみの町田市ですが(泣)、玉川学園は、ちょっと、「町田らしくない」地域。同じ小田急線沿線では成城学園前との繋がりが強く(第二の成城、ともいえる)、坂が多いことを除けば、お洒落なパティスリーやレストランやカフェが似合う街並み。私(発行人)、宇野津さんと何度か玉川学園前駅周辺でご一緒したことあるんですが、宇野津さんの声かけられ率、高い! 地域に馴染んでるな〜、自宅のすぐ近くで職質されちゃうオレとはエラい違いですよ、ったく。でっ、そんな宇野津さんからウィッチンケア第13号に届いたのは、第11号に掲載した恋愛小説「水野さんとの15分」の続編です。タイトルは「好きにすればよい」...ほんと、好きにしてます、主人公の「わたし」こと、佐々木智子。
「わたし」がランニング中に落とした赤いカシミアの手袋を拾ってもらったことが縁で、言葉を交わすようになった水野さん(音響メーカーの技術士/配偶者は保育士/私立中学に通う一人娘あり)。自動販売機の前で温かいお茶を飲みながら世間話をする程度には親しくなって、でもLINE交換しようと言われて「やめときます」と答えて...今作はそんなプラトニックな二人のその後のなりゆき。運命の再会場所は《オーケーというスーパーのお酒コーナー》で、ええと、ここからは怒濤の展開です。どうなったって...それは小誌を読んでのお楽しみなんですが、ここまで書いてなにも伝えないのも寸止めイケズなので、ちょっとだけ。はい、危険水域は軽く飛び越えています。そのへんの描写もいい塩梅にリアルですが、このお話の注目すべきところは、その後の「わたし」の決断ではないか、と。
あらためて「水野さんとの15分」〜「好きにすればよい」を通しで読んで、私が思ったのは「この話を水野さんが主人公のノベライズにしてはいけない」、でした。本作が醸し出す「カラッと爽やかなエロさ」が、水野さん目線で綴られると...mmm、どうなってしまうんだろう。たとえばOfficial髭男dismの「Pretender」や優里の「ドライフラワー」のような若者のラブソングに遠く及ばない、湿っぽい話になってしまいそうな予感がする。あと、もうひとつ思ったのは、もしまったく同じ話で「わたし」が男、水野さんが女だったらどうなの、ってことでして、これに関しては読者の声をぜひ聞いてみたいな、と。
ホテルに行くのはそれはそれは久しぶりで、内心心臓が飛び出そうなくらいあわあわしたけれど、私はいい年の大人なので見た目はあわあわしない。これから取引先の会社を訪ねるようなよどみなさで水野さんの後ろをついていく。水野さんのふるまいがなかなかスムーズなので、エレベーターの中で「あの、もしかしてこういうの慣れてます?」と聞いたら「慣れてるわけないじゃないですか」と笑った。まあ、慣れていても慣れてなくてもどちらでもいいのだ。進めると決めたのは私で、いいなと思っていたとホテルに来られるなんてそれは宝くじに当たったような幸運なのである。
〜ウィッチンケア第13号掲載「好きにすればよい」より引用〜
宇野津暢子さん小誌バックナンバー掲載作品:〈昭和の終わりに死んだ父と平成の終わりに取り壊された父の会社〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈水野さんとの15分〉(第11号)/〈秋田さんのドタバタ選挙戦〉(第12号)
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