2019/05/25

vol.10寄稿者&作品紹介25 矢野利裕さん

つい先月、新刊『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』を上梓した矢野利裕さん。版元の【著者略歴】には“批評家、ライター、DJ”と紹介されていまして、そうですそうです、昨年6月に小誌が主宰した〈ウィッチンケアのM&Lな夕べ 〜第9号発行記念イベント〜〉でも大トリDJとして圧倒的なパフォーマンスを披露してくださりました。矢野さんには昨年、トミヤマユキコさんとのご縁をつないでもらったり、とたいへんお世話になっておりまして...そうだ、明日(5/26)の夕方4時から紀伊國屋書店新宿本店で「文化系トークラジオLife トークイベント 武蔵野レアグルーヴ ~いま、〝武蔵野〟を再発見する~」というイベントがあり、民俗学者の赤坂憲雄さん、TBSラジオ番組プロデューサーの長谷川裕さん、小誌寄稿者でもあるライターの宮崎智之さんとともに矢野さんも登壇するので、参加して直接お礼を言ってこよう!

さて、多方面で活躍する矢野さんですが、じつは学校の先生(都内私立の中高一貫校に勤務)でもあります。小誌今号への寄稿作には「本稿は、勤務校紀要に書いた文章を一部改変したもの」との付記が添えられていて、発達障害の生徒に対する国語教育について、さらに新学習指導要領や大学入学共通テストについても、現場発の実感のこもった提言がなされています。読んでいて思うとこ多々あり。そうか、落ち着きがなくてダメな子、と言われ続けた昭和の小中学生だった私は、いまの物差しだと“「合理的配慮」がなされてもいい存在”だったのかも...みたいな自分に都合のいい発見もあれば、文部科学省の方針についての「多様性の擁護それ自体がグローバル資本主義の一要素になっているよう」という指摘にはっとして、この国の未来に思いを馳せたり。作品タイトルにも関連している「ASDの症状においては、デノテーション(外示)を読み取れてもコノテーション(共示)は読み取れない」という一文も、そうなのか! とetc.。とにかく多様な視点/論点を喚起する一篇で、教職関係の知人から「とても興味深く読んだ」とSNSでDMをもらったり...小誌は小さなメディアですが、矢野さんお勤めの学校(勤務校紀要)、という回路以外のかたにも、ヴァージョンアップした作品として届けられたこと、嬉しく思います!

...それで、個人的に今作を読んでいまも胸中に沸き上がっている素朴な(しょうもないっぽい)疑問を、最後に。新しい「論理国語」では公共文書や契約書の読解能力を高めることが求められているようですが、いやね、つい最近携帯キャリアの変更を家電店でしたけれど、社会的にスムーズに手続きを済ませるには、店員さんに求められるまま【同意します】の項にチェックを入れていく、が「正しい」んじゃないか、と。あの場面であのような契約書テキストをしっかり読み込んで長々と内容確認してたりしたら、そっちのほうが社会的に「コミ障」...っていうか、世の中にはこういうことが満ち溢れているような気がして。あの【同意します】の真意...「とりあえずあなたのこと信用しとくから...」と読解するべきなんじゃないかな、なんて。...失礼しました。みなさま私の戯言は放っておいて、ぜひ矢野さんの寄稿作をご一読ください!



 では、コミュニケーション偏重を拒否し、従来的な読解作業を硬派に突き詰めればいいのか。教室空間それ自体が抱える問題は見直しつつ、しかし、授業内容については、どんな条件の生徒であっても負担にならないように、堅実かつ広がりのある読解作業を進めればいいのか。個人的には、それもありうる選択のひとつだとは思う。しかし、だとしても、「合理的配慮」の問題は残る。
 というのも、教員免許更新の講習によれば、現代文における「作中人物の心情を読み取りなさい」式の問いは、自閉症スペクトラム症(ASD)の生徒に対する「合理的配慮」に欠ける可能性がある、というのだ! この発想はまったくなかったので、とても驚いた。自閉症の典型例として、言外の意味を読み取ることができない、行間を読むことができない、というものがある。言葉を言葉どおりに受け取るため、言葉を発した者の皮肉や照れ隠しなどに気づくことができない。そうして人間関係にトラブルが生じることが、ASDの人には多い。

ウィッチンケア第10号〈本当に分からなかったです。──発達障害と国語教育をめぐって〉(P148〜P156)より引用

矢野利裕さん小誌バックナンバー掲載作品詩的教育論(いとうせいこうに対する疑念から)(第7号)/先生するからだ論(第8号)/〈学校ポップスの誕生──アンジェラ・アキ以後を生きるわたしたち〉(第9号)

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Vol.11 Coming! 20210401

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