2019/05/27

vol.10寄稿者&作品紹介30 松井祐輔さん

東京都台東区蔵前にある本屋さんH.A.Bookstoreの店主でもある松井祐輔さん、小誌前号、前々号では本にまつわる創作系作品をご寄稿くださいましたが、今号への一篇は書店経営者として、かなり率直に心中を吐露したエッセイ。世知辛い、世知辛い、とご自身も繰り返していますが、ホント、現場にいるかたならではの、リアリティのある事例が並んでいます。ほんとにねえ、今世紀に入ってからこのかた、システムを組んで中抜きする、みたいなビジネスが隆盛で。コンビニエンスストアのドミナント戦略、なんて話をニュースで聞くと、背筋に冷たいものを感じますよ。ったく、各店舗を定期的に訪れて経営指導を行うスーパーバイザーなんて肩書きの人...いや、それはそれで現場と向き合うんだからキツい仕事かもしれないけれど、けれどもですよ、そもそもその商売のシステム自体が悪魔的なんじゃないっすか、と。...あっ、ちっとも実効性のない世相放談みたいになってしまった。まずは書店主である松井さんの言葉に耳を傾けましょう。

松井さんはこれまでの商売の仕方でいくと「いま以上に手数料を払って商売しなきゃいけない、という未来がすぐそこにみえている」と書いています。私、少しまえにセブンカードってのをつくって、最近はペットボトルのドリンク1本でもそれで買うことに慣れてしまった。カード使うんなら最低でも1万円くらいの買物を、みたいな“小売店に対する良識”、遠くない過去にはたしかにあって、それはわりと共有されていたような記憶もかすかに残っているけれど、いまはもう背に腹は代えられないので身も蓋もなく使ってる(って、あらら、またコンビニエンスストアの話になってしまっていますが)。しかし、小さな書店で1冊売れた文庫本の決済がクレジットとか、ネット販売で注文があって送料実費で発送とか、それは世知辛いなぁ。

印象的だったのは後半に記されている「そもそも、〝マス〟なメディアとしての価値は本にはもうあまり残されていないんだと思う」という一文。...それでも松井さんは活路を見出すべく、取次経験者のノウハウも駆使して、明るい未来図を思索しています。私、少しまえに「マガジン航」に寄稿して、書店の未来について傍観者みたいな雑感を述べてしまいましたが、いやいや、松井さんのような次世代を担うかたには頑張ってもらいたい。みなさま、ぜひ小誌を手にして、松井さんが書店の最前線で考えていることを読んでみてください!



 店頭の売上があまりにも低いので、WEBショップでも開設しようかと思っている。いままでやらなかったのは、ぼくは取次もしているので、卸先と競合するような取り組みをするのはどうなんだ、という道義的な部分もあるのだけれど、そもそも「手数料」という要因が大きい。このご時世、Amazon に倣って送料無料、なんていうものは流石に対抗する気がないので実費で購入者からいただくとしても、新刊本の利益率は20%程度で、仕入代金を支払う際の振込手数料や、クレジットカードの利用手数料3%でもためらうレベルなのに、WEBショップの運営会社に更に月額料金やクレジット決済と合わせて5%強の手数料を取られるなんていうのは耐え難い。こっちは20%の中から家賃をまかなって人件費が出たり出なかったりしているギリギリのラインでやっているのだ。だとしても、利益は雀の涙でも売上が伸びればせめて次の仕入れが楽になる、みたいな、本当に世知辛く切ない理由でそれは検討されている。

ウィッチンケア第10号〈世知辛いから本を売る〉(P184〜P186)より引用

松井祐輔さん小誌バックナンバー掲載作品
出版流通史(編集中)(第8号)/とある平本な人生の話〉(第9号)


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Vol.11 Coming! 20210401

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