2022/04/27

VOL.12寄稿者&作品紹介03 ふくだりょうこさん

 ふくだりょうこさんとは今号寄稿作の最終チェックやりとり以降しばしご無沙汰スイマセンなのですが、しかし、SNS経由で伝わってくる最近の福田さんの近況、あまりにもお忙しそう過ぎすぎる。まず、cinema PLUSでのドラマレビューが毎週3本。高橋一生主演のTBS金曜ドラマ「インビジブル」と二宮和也主演のTBS系日曜劇「マイファミリー」とNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。そしてここ一週間ぐらいだけでも、Netflixの全世界独占配信ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』がらみで斎藤工と上野樹里、MBS/TBSドラマイズム「明日、私は誰かのカノジョ」に出演する宇垣美里にインタビューetc.。...ええと、なんだか「ふくださんって芸能系のライターでしたっけ?」みたいな紹介になっていますが、違うんです。noteの《お仕事のご依頼について》という自己紹介ページには、ゲームシナリオ執筆を筆頭に「できること」があと6個。他にも昨年創刊した文芸誌「Sugomori」も順調にvol.1、vol.2が出て、vol.3は「団地」をテーマに第三十四回文学フリマ東京(5/29)でお披露目される、とのこと。あっ、文フリ東京、ウィッチンケアも出店しますので、またお目にかかれますね!


かように超多忙なふくださんが、小誌第12号に寄稿してくださった掌編「死なない選択をした僕」。2022年等身大の目線で近未来SF小説を描いてみたらこんな風景かもしれない、というリアル感を漂わせた物語です。ふくださんの第10号、第11号への寄稿作はいずれも「男女の微妙な心の綾」を描いたもので、それは「できること」筆頭の(恋愛シミュレーション)ゲームシナリオ執筆のスキルから派生した作風のようにも思えましたが、今作は、なんか、そういう枠からはみ出しているみたい。はい、ぜひ小誌ではいろいろはみ出してみて、その「試み」を本職にフィードバックしていただければ嬉しく存じます。

登場人物は「僕」と「キリヤマ」の2人。退屈な職場での何気ない雑談で構成されているのですが、二一××年の人間の生活様式が明らかになり、さらに2人のバックグラウンド等が断片的に描かれたりしていく中で、その雑談がやるせない重みを帯びてきます。私は古い人間なのでいまだに未来=ユートピア、的なことを信じたい気持ちもちょっとはあるんですが、しかし、とくに21世紀に入って以降は未来=ディストピアがヒトのマインドのデフォルトだなぁ、とこの一篇を読んでしみじみ。あと、二一××年でも、やっぱりヒトにとっておカネは大事なのか、とも...。みなさま、ぜひ本作を読んで、ヒトの未来の生き方について思いを馳せてみてください!




 肉体を持つ『旧型』の人間である僕は、日々モニターに囲まれた部屋で電源系統の管理を行っていた。脳をデジタル化したことによって、電力はそれまで以上に必要不可欠なものになった。いつ起こるか分からない災害や事故に備えて何重にも予備電源が用意されているが、ごく稀に故障が発生する。そのときの対応をするために、僕を含め、数人の旧型の人間がここで待機している。それこそ、こんな単純な仕事ぐらいデジタル化できないのかと思うが、何かしらの理由があるらしい。僕は詳しくは知らない。電源、だけではなくて、もっとこう、複雑な何かがあるのだろう。ただ、ここの給料は良く、お金を貯めて僕もいつかはこの肉体を手放したいと思っている。病気にも怪我にも無縁の生活を手に入れる。そう、脳のデジタル化には金がかかる。だから、貧しい人間はいつまでも肉体に縛られ、死に怯えている。

〜ウィッチンケア第12号〈死なない選択をした僕〉(P016〜P019)より引用〜


ふくだりょうこさん小誌バックナンバー掲載作品:〈舌を溶かす〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/知りたがりの恋人〉(第11号)

【最新の媒体概要が下記で確認できます】

https://bit.ly/3vNgnVM


Vol.14 Coming! 20240401

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