2015/05/22

vol.6寄稿者&作品紹介32 かとうちあきさん

2010年の「野宿入門」刊行以来、ほぼ毎年1冊くらいのペースで新刊を発行しているかとうちあきさん。昨年秋には「バスに乗ってどこまでも 安くても楽しい旅のすすめ」が出ましたが、今年も!? そんなかとうさんが横浜にお店(のようなもの)を持ったのは昨年10月でして、今号寄稿作には開業するに至った経緯が綴られています。...ええと、小誌校正担当の大西寿男さんはかつてご自分の校正という仕事を「積極的受け身」と表現していましたが、かとうさんの今回の決断はその真逆で、「消極的責め技」みたいな印象を抱かせます。

<働くのがイヤ>で<お金を使わないのがいちばん>なんだけれども、それでは生きていくうえで問題なわけで、では問題を解決するには? じゃあ自分でいままでにない種類のお店をつくっちゃえ、という発想。 かとうさんがすごいのはそれを実行しちゃうところでして、作品内では淡々と語られていますが、物件探し〜引っ越し〜店づくり〜商品(のようなもの)の手配〜新しい地元共同体とのコミュニケーションという、<働くのがイヤ>で<お金を使わないのがいちばん>だと思っている人がクリアするにはかなりハードルが高そうな案件を、さらっとクリアしてしまうパワー。ふんわか馬力というか、なんというか。そして思わずみんなが協力したくなっちゃう(なぜかかとうさんのご紹介をしていると「っちゃ」を使いたくなる)お人柄というか佇まいも...。

お店のようなもの」があるのは 横浜市南区中村町。<活気あふれる横浜橋商店街を抜け、道路を渡って中村橋商店街に入ると、ぐんと人通りが少なくなる>と記された場所に実際お邪魔してみると、あ〜、なんかこの雰囲気って、新宿や渋谷に対する千駄ヶ谷あたりみたいな位置関係なのかな、と思いました。みなとみらい21まで、きっと本気で歩けば30分で着きそうな場所だし。なにより羨ましいのは横浜橋商店街、そしてその周辺に個性的なお店がたくさんあること。ですので、小誌の「試読会のようなもの」でお世話になったさいにはお総菜選びで至福のひとときを過ごせました!

そしてそしてそのイベントのあいだ、私は密かに商店街から持ち寄った焼き鳥を串食いしていまして、いやぁ、こればっかりは自分勝手といわれても譲れませんでして...スイマセン。ネットには<焼き鳥を串から外すタイミングは…好感度UPの居酒屋メニューの美しい食べ方>なんて記事もあって、そこには「冷めるとお肉が串にくっついて外しにくくなって」なんて理由も書いてありますが全然納得いかない(好感度UPのためにするの?)。そもそも串抜いた時点で「焼き鳥」ではなく鳥の焼いたもの...鳥にとっては二度目の死、ってなんで焼き鳥の話になっちゃったのか!? 今度、再びかとうさん我妻さんと焼き鳥問題について議論したいです〜。


 ちょうど、働くのがイヤだ、という気持ちも高まっていた。なるべく働かずに暮らすためには、お金を使わないのがいちばんだ。そのためには近所にたくさん友人がいるといい。ちょっとしたものの貸し借りもできるし、会うのに交通費がかからないから。近所にいない場合は、友人が遊びに来てくれるといい。わたしに交通費がかからないから。じゃあとりあえず、来てくれるような場所をつくっちゃえばいい。場所があったほうが近所で新しい友人もできそうだし。
 それに、働くのがイヤならば、イヤではない「商売のようなもの」を自分でつくる試行錯誤をした方がいいとも思った。
 それで友人らを、一緒に引っ越ししようよと誘いつつ、店のようなものをやることにしたのでなにか売れそうなものをくれと頼みつつ、物件を探して借りたのが、いまの「お店のようなもの」だ。
 横浜市南区中村町。活気あふれる横浜橋商店街を抜け、道路を渡って中村橋商店街に入ると、ぐんと人通りが少なくなる。そこも抜けて橋を渡った通りは、もはや商店街とは言い切れない「商店街のようなもの」。その寂れっぷりや、ところどころ残っている昔ながらのお店が味わい深くて、一目ぼれだった。


ウィッチンケア第6号『のようなものの実践所「お店のようなもの」』(P196〜P199)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1

cf.
台所まわりのこと」/「コンロ」/「カエル爆弾

Vol.14 Coming! 20240401

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