2015/05/07

vol.6寄稿者&作品紹介08 野村佑香さん

女優の野村佑香さんは近年、幅広い分野で活躍しています。NHK(Eテレ)「おとなの基礎英語」では旅ジャーナリスト・加藤純を演じ、フジテレビ「みんなのニュース」ではコーナーのナレーション、BS-TBS「僕たちは昭和を生きた」では薬丸裕英さんとともにインタビュアー...私は田中康夫さんの回を見ましたが、楽しかった。田中さんがAORを説明するのに自前のLP(ニール・ラーセンの「Jungle Fever」!)を見せたり、菊見せんべいをみんなで食べたり。さらにNHK-BSの旅番組「ぐるっとシリーズ」では2010年から<旅人>として世界各地をまわり続けています。

小誌今号への野村さんの寄稿作「今日もどこかの空の下」は、同番組で訪ねた旅先での思い出や雑感を綴ったもの。今年1月に出版された野村さんの著書「ぐるっとイタリア4000キロ! 船でめぐった港町」では、ジェノヴァからヴェネツィアまでの記録が掲載されていますが、「今日も〜」ではロフォーテン諸島のスヴォルバール(ノルウェー)、アマゾン河口から230キロ内陸に入ったトメアス(ブラジル)、サフランボル(トルコ)、ナコンシータマラート(タイ)、シャウエン〜アルホセイマ(モロッコ)でのランダムな記録(...というより記憶)と心象風景が自由に描かれていて、野村さんのお人柄が垣間見えるような作品です。

トメアスの加藤旅館のテレビで見た、天童よしみやにしきのあきらのこと。サフランボルでは雪を見て<「凍るっていうのは、時が止まるってことだな」と思ったり>、ナコンシータマラート駅前では不意に過去の出来事が甦ってきたり。なかでも<今までの人生で一番>だったというモロッコでの星空体験は、ひときわ印象深いシーンです。ここで野村さんは夜空との一期一会に思いを巡らせるのですが、見上げている自分のことを<あほうの子のように口を開けて>と表現していまして、それっていったい、どんな感じだったんだろうと思わず想像...ぜひ本編で読んでいただきたいです!

小誌発行後、NHK出版さんより連絡がありました。同社の「実践ビジネス英語」関係者が野村さんの作品を読み、ぜひ一部分を転載させて欲しい、と。刷り部数1000の小さな媒体ですが、意外に意外な(!?)人の元にも届いている(昨年は第5号に掲載した柳瀬博一さんの作品がNHKの「ドキュメント72時間」にちらっと登場したり)...!? 掲載情報の詳細は、追ってまたご紹介致します!



 なぜ、この町では昔のことを思い出すんだろう。13歳まで生きたウェスティという犬種の淳が亡くなった時、私たちはとっても立派に彼を送り出したこと。思春期の私は世界とうまくいかずにちぐはぐだったこと。おばあちゃんの家の二階で、一人ぺたんと床に座っていた時のこと。ベランダからの照り返しで屋内なのにまぶしいほどで目がうまくあけられないけれど、音を鳴らしながら回る古びたせんぷうきの風とそよ風が涼しかったこと。そんないつかの記憶が、この町で重みのある湿気の空気とつれだって歩いていると蘇ってくるのだ。タイのナコンシータマラート駅前で、今は涼しく車の中で待機しながら、その不思議を思う。
 昨日出会ったパクディーさんのおうちは、自分の家じゃないのにしっくりと収まる感じだったな。二階から見える緑も馴染みがあるように思えたし、家のどこでも親しく感じる空気が漂っていて……あ、それでおばあちゃんの家を思い出したのかしら。それとも、これが、アジアということなのだろうか。国籍が日本、ということではなく、自分はアジア人だということ。それは、ルーツみたいな大きな流れに繋がっていくような感覚で、無意識に体が? 心が? 自分の時間をも遡っていたのだろうか。


ウィッチンケア第6号「今日もどこかの空の下」(P046〜P051)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1

Vol.14 Coming! 20240401

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