2026/04/21

vol.16寄稿者&作品紹介01 柳瀬博一さん

 ウィッチンケア第5号からの寄稿者・柳瀬博一さんは今号の巻末にある《参加者のVOICE》欄で「これからは土木っす!」と記していますが、これは勤務先の大学(柳瀬さんは東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授〈メディア論〉なのです)で2024年から推進している、横浜キャンパスに「ホタルが暮らせる谷」を再生・創造するプロジェクトについてのコメント。柳瀬さんのnoteには進行具合が克明に記録されていて、小誌への原稿執筆頃の写真には、土木作業に勤しむ柳瀬教授の勇姿も。今年の夏には、すずかけ池の棚田にホタルが戻ってくることを祈ります。みなさま、ぜひアクセスしてみてください!




そんな柳瀬さんの今号への寄稿作が扱っているテーマは、ほんと、誰にとっても他人事ではない問題です。ダブルケア、とは二つの世代(親と子)をケアする、の意、平たく言い換えれば、子育てと親の介護が同時進行の人。柳瀬さんは、該当するのは「現在40台半ばから60代前半」の過半数、という見立てで持論を展開しています。政府が2016年に見積もったダブルケア当事者人口は25万人。しかし、この調査におけるダブルケアの定義は①要介護の親を持ち ②未就学児の子供を持っている当事者、だと。「ダブルケアの当事者として言わせてもらうが、この政府の試算ではダブルケアの実態から大きく乖離する」との柳瀬さんの意見に、私も肌感で同意です。だって、小誌寄稿者のなかにも、この問題と向き合いつつ生活を成り立たせている方が、少なくもなくいらっしゃるし。


「①まだ社会に出ていない高校もしくは大学までの子供 ②65歳以上の老人、の親であり子である世代」という条件で、柳瀬さんがAIに算出させたダブルケアの当事者および予備軍の数! ぜひ小誌を手にしてお確かめください、びっくりですよ。ただでさえ少子高齢化が進む我が国の、「なぜか政府もメディアもはっきり可視化させない問題。あまりに巨大であるがゆえに。日本の未来の行く末を左右する問題」。さらに寄稿作後半では「ダブルケア・クライシス」とともに「介護帰省クライシス」にも触れられていて...自分の場合(東京と千葉の夫婦/子供なし)、いかに軽負担なのかと思い知らされました。それでも、実父母義父母をおくるまでは諸々たいへんだったのですけれども。


ウィッチンケア第16号(Witchenkare VOL.16)
発行日:2026年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりーは発行人の屋号)
A5 判:272ページ/定価(本体2,000円+税)
ISBN:978-4-8-6538-180-1 C0095 ¥2000E



 というのも、「子育て」と「親の介護」はもっともっと幅の広い「仕事」だからである。
 政府の算出したダブルケアの当事者は、要介護の親と、乳幼児(赤ちゃんから未就学児)を両方持った世代、という見立てである。この条件でダブルケアの当事者をカウントすると確かに25万人程度かもしれない。
 しかし、この定義は、子育てというケアと、親の介護というケアを、非常に小さく見積もっている。実際に子育てをしている人は全員頷くはずだが、子育ては生まれた瞬間から、子供が学校を卒業して就業するまで続く。
 ケアというのは、赤ちゃんを抱っこするような行為だけではない。学校の選定、PTA活動、サッカークラブ、塾の送り迎え、受験対策、そして何より学校費用の負担。いじめ問題もあるかもしれない、不登校だってあるかもしれない。
 物理的、金銭的、時間的、心理的コストがかかり続ける限り、子育ては終わらない。万が一子供が引きこもりになった場合は、学校を出てからも「ケア」が継続する。一般的に考えても、子供が高校もしくは大学を卒業する18歳から22歳まで、金銭的、肉体的、心理的ケアは、ずーっと続く。
 一方、親のケア。かたときも目を離せない「要介護」の段階で初めて生じるわけではない。むしろ一見軽くみえるけど、実は「命に関わる問題」が見逃されている。それは、子供が親と離れて暮らす場合の、年老いた親の買い物難民、とりわけ「食品が買えない問題」である。
 農水省がシビアな数字を出している。
 全国の食品アクセスが困難な老人がどれくらいいるのか。2020年に算出したのだ。結果は、──2020年における食料品アクセス困難人口は、全国で904万人と推計され、全65歳以上人口の25.6%であった。このうち75歳以上では566万人、全75歳以上人口の31.0%であり、食料品アクセス困難人口のうち75歳以上の占める割合は63%であった。

~ウィッチンケア第16号掲載〈ダブルケア・クライシス問題〉より引用~


柳瀬博一さん小誌バックナンバー掲載作品:〈16号線は日本人である。序論〉(第5号)/〈ぼくの「がっこう」小網代の谷〉(第6号)/〈国道16号線は漫画である。『SEX』と『ヨコハマ買い出し紀行』と米軍と縄文と〉(第7号)/〈国道16号線をつくったのは、太田道灌である。〉(第8号)/〈南伸坊さんと、竹村健一さんと、マクルーハンと。〉(第9号)/〈海の見える岬に、深山のクワガタがいるわけ〉(第10号)/〈富士山と古墳と国道16号線〉(第11号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈2つの本屋さんがある2つの街の小さなお話〉(第12号)/〈カワセミ都市トーキョー 序論〉(第13号)/〈湧水と緑地と生物多様性 ~「カワセミ都市トーキョー」の基盤~〉(第14号)/〈日本は東京以外でできている〉(第15号)

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Vol.16 Coming! 20260401

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