現在は体験作家、闇歩きガイドとして「闇の大切さ」を広く説き続けている中野純さん。昨年8月にはNHK Eテレの「SWITCHインタビュー」に片桐はいりさんとともに出演。また同年11月にはJ-WAVEの「UR LIFESTYLE COLLEGE」で吉岡里帆さんと対談したり...私は中野さんとは短くもないお付き合いなので、超オシャレで超スリムだった若き日の中野さんが、インディーズ音楽やホーミーやMacintoshに夢中だった時代も知ってはいるのですが、四半世紀以上の時を経て、人はこうして自身のライフワークを発見していくのだな、とある種の感慨を覚えたりして。でっ、そんな中野さんのウィッチンケア第13号への寄稿作は、ド直球(野球に例えるところが四半世紀感w)。なぜ闇が大切なのかを大真面目に(but おもしろく)語っています。
中野さんの思考回路はときに込み入っていまして、私などに解説できるものではありませんが、たとえば寄稿作の最後のほうには「どうでもいいけど絶対に必要」みたいな一文がさらりと。「どうでもいい」but「must」...こうした“併存”は、もしかすると中野さんの本稿執筆開始時からの姿勢なのかもしれなくて、大真面目な「闇論」の冒頭から、いきなり《かのテーゲは生まれてすぐに「もっと闇を!」と言ったという》と不真面目に(...ここ、とっても大事なので、「ん!?」とスルーしないでほしい)。ええと、老爺心で注釈しますと、もちろんJohann Wolfgang von Goetheの「Mehr Licht!」を踏まえての面白ネタ(!?)です...って、却ってわかりにくいって。。。
タイトルに使われている「臥学」「歩学」という言葉は、「座学」へのカウンターとして中野さんが生み出した造語、と捉えるべきだと思います。《座学のSDGs教育だけではダメなのはもちろん、班を分けて調査してレポートしましょうでもダメで、人間が生態系の一員であることを実感するために、なにより夜の山へ行って、闇の森の中で仰向けに寝っ転がらせるという教育をすべきだ。座学でなく「臥学」だ。それとともに、夜の山を無灯火で駈けるように歩く「歩学」もよろしい(当然、安全を確認したうえで)》。さて、闇を疎かにする現代人には、どんな未来が待っているのか? 作中に何度も登場する「謙虚」という言葉に込められた中野さんの思いを、ぜひ小誌を手に取ってお確かめください。