2015/05/03

vol.6寄稿者&作品紹介03 開沼博さん

3月に「はじめての福島学」と「常磐線中心主義(ジョーバンセントリズム)」という2冊の本を出した開沼博さん。刊行に合わせて日本全国でイベントを開催しながら、小誌にもご寄稿くださったこと、あらためて感謝致します。今号への掲載作はタイトルからもわかるように、小誌第5号の「ゼロ年代に見てきた風景」の続編的内容。私は前作の<私がこの10年間置かれてきた環境から見えた「ゼロ年代」が、既存の「ゼロ年代」とはだいぶ違う何かだと感じているからだ。>という一節にとても引っ掛かっていました。ここで開沼さんが<既存の「ゼロ年代」>と表現しているのは、いわゆる言論系の人たちが当該期間の末期から総括し始めた「ゼロ年代」で、開沼さんはそこからこぼれたものも丁寧に拾っていずれ再検証しましょう、と。

思い出すのはかつてリアルタイムで読みおもしろかった「80年代の正体!」というムック。私の本棚のどこかにあるはずだが見つからず、ネット検索すると発売が1990年4月。まあ、<既存の「ゼロ年代」>と同じくらいの時間軸で80年代が総括されていて、表紙には<それはどんな時代だったのか ハッキリ言って「スカ」だった!>との一文があります。この本を手に入れたときの感覚はちょっと覚えていて、そろそろ「新しい」でもなくなった事象をわかりやすく解説したりバッサリ斬ったりするモノ言いって、けっこう小気味よく感じられたのです(更新する快感、みたいなもの?)。でも、もちろんこの本が80年代の正体を言い当てていたわけではなく、ましてや<「スカ」だった!>は、いまや乱暴な煽りの見本みたいだし。

今回の「パート 2」には「与沢翼」「猪子寿之」「菅直人」「はあちゅう」といった有名人も登場します。おもしろいのは、その人物との交友譚が記されているのではなく、あくまでも「見てきた風景」の一部として登場すること。きっと親しく言葉を交わしたり、その後の人間関係だって、と想像できるのですが、開沼さんは「見てきた」記憶のみを積み重ねています。この書き手のスタンスによって、日頃メディア経由で受け取る人物情報とは違った像が垣間見える。私は「私の友達の●●が○○したので応援して!」みたいな文章を見るだけでいや〜な気持ちになる人間なので、本作での人物の描かれ方には共感しました。

今作内の<とりあえず、ホリエモンブーム前夜に、その後ホリエモンのようにはなりえなかった夢が無数に転がっていたのは確かだった>という一節も、個人的には引っ掛かっています。世の中全般は不況で勝ち組と負け組がはっきりした、と言われていた時代。もしかすると開沼さんの「見てきた風景」のどこかには、「現在の風景」の萌芽みたいなものが隠れていたかもしれない。無数に転がっていた夢が壊滅したとも思えないし...まだまだ先を読んでみたい、大きなテーマだと思います。



 その中に「ベンチャー社長のカバン持ち」という事業があった。ベンチャー企業や自ら起業することに興味がある若者が集まってきて、合宿をしながらアントレプレナーシップ(起業家精神)や財務・法務の基礎を座学で学んだり、ベンチャー社長の講演を聞いたりする。その上で、ドリームゲートとつながりのあるベンチャー企業の社長のカバン持ちを1週間程度する。そんなプログラムだった。
 ドリームゲートとつながりのあるベンチャー企業とは、例えば名前が一般にも知られるところで言えば、GMOやディー・エヌ・エー、サイバーエージェント、ライブドアなどIT関係はもちろん、インテリジェンスのような人材系、ワタミのような飲食系も入っていた。それらの一部の企業がこの「カバン持ち」に協力していた。
 そこを覗きに行った際に、特筆すべく、というほどでもないが、それなりに目立っていたのが当時、早稲田の学生だった「与沢翼」だった。与沢さんのイメージはいまと全く違った。
 まず体は細身で小柄さが目立った。


ウィッチンケア第6号「ゼロ年代に見てきた風景 パート2」(P014〜P019)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1

cf.
ゼロ年代に見てきた風景

Vol.14 Coming! 20240401

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