ジャイアントパンダの寿命は飼育されると約30年だそう。木村カナさんはウィッチンケア vol.3への寄稿作品で自身のGP愛を爆発させていまして、その対象への愛の目覚め、距離のとりかたがおもしろかったです...ってやっぱり私はヒトへの関心!? いやいや、いままで知らなかったあれこれがわかり、GPを見る目が変わりましたとも(熱にやられた〜)。木村さんの文章は「ユリイカ」2005年11月号(特集*文科系女子カタログ)に掲載された「二十一世紀文学少女・覚書」という作品でファンになりまして、そういえば同作の書き出しは「私は、いまに気が狂うかも知れません。」という太宰治の「千代女」からの引用だったっけ。
今回の木村さんの寄稿作品「パンダはおそろしい」は、「What immortal hand or eye. Dare frame thy fearful symmetry ?」というWilliam Blakeの引用から始まっています。どんな不死の手または目がおまえのおそろしい均整をあえてつくったのか...そして、そのおそろしさになんと深く魅了されてしまったことか、木村カナさん!
パンダがもてはやされるのは、独特の見た目の魅力ももちろんあるけれど、生息地がきわめて限定されていて、個体数が少ないせいもあるだろう。それゆえに、自然環境保護のシンボルにもなるし、外交やらビジネスやらにも利用される。
放っておけば絶滅するから、と、ヒトが必死で大切にしているのに、パンダの方には、やる気があるのか、ないのか。パンダの繁殖は非常に難しいとされる。パンダの発情期は、一年のうちで、春先の三日から一週間だけ。しかも、相性が悪いと交尾が成立しない。その上、パンダは双子を産むことが多いのに、ちゃんと育て上げるのはたいてい一頭だけ。そういう習性だから、パンダ任せにしておいたら、その数はちっとも増えない。
だから、パンダの殖える気のなさにやきもきするのはもっぱらヒトの方である。発情期に備えて交尾シーンのビデオを見せて性教育。ぬいぐるみを与えて育児の練習。交尾に備えてのダイエットとスクワット。そして、パンダの巨体を拘束し、麻酔を打っての人工授精。いずれもパンダのつがいがいる動物園で実際に行われた・行われている試みだ。ヒトも大変、パンダも大変、とんだ一大事である。
近年には、双子で産まれたパンダを、飼育員がすばやく確保し、双子のパンダを、親元と人手の間で、定期的に入れ替えながら哺育していく、というメソッドが中国の保護研究センターで開発され、成功を収めている。ここ数年、インターネットでよく目にするようになった、赤ちゃんパンダの集団の画像や動画は、その成果なのである。生まれたてのうちから、半ばヒトが育てることによって、パンダの増産が可能になった、というわけ。
Witchenkare vol.3「パンダはおそろしい」(P114〜P119)より引用/写真:徳吉久
http://yoichijerry.tumblr.com/post/22651920579/witchenkare-vol-3-20120508