2012/05/19

vol.3寄稿者紹介11(藤森陽子さん)

食欲も体力の一部だったんだなぁ、とつくづく実感する昨今。高校生のころはなんであんなにいつも腹が減ってたんだろう。朝飯しっかり食べても2時限目が終わると空腹で早弁、昼休みにはパンなんか買い食いして、下校途中にラーメン、帰宅してカールや歌舞伎揚を食べながら夕飯を待って完食、自分の部屋に入ってしばらくすると腹減ってきて台所まわりをがさごそ、ついでに寝酒も失敬して...次の朝、胃もたれも二日酔いも決してなかった。体力っていうか、代謝が高かったんだろうな。近年の私は、あの嵐のような空腹感が懐かしい...。

スレンダーな藤森陽子さんにもかつては凶暴な食欲...いや、常々グルメなレディだなぁとは思っていましたが、まさか量にこだわっていた時代があっただなんて、今回の作品を読むまで想像だにしませんでした。最近はFacebookやTwitterで「BRUTUS」「Hanako」etc.の食がらみの取材に飛び回っている様子も伺っておりまして、また体調など崩さなければよいのだが、と密かに心配していましたが...なんだ、地金は食いしん坊体質だったのか! そして「藤花茶居」の屋号で続けているケータリングも楽しそうで...今度、小誌名を冠した茶話会でもぜひ開催してください。ウィッチンケア茶話会。香り高い中国茶や台湾茶をいただきながら、小誌掲載作品を朗読する、とか。

「4つあったら。」はテレビっ子で食いしん坊だった藤森さんが、兄への殺意(...そんな、大袈裟な!)を抱いた思い出を綴った作品。私はいままで藤森さんの書いた数多くの文章を読んできましたが、身内ネタ/自分語りっていうのは、たぶん、SNS以外では初めてなのでは? ぜひこの方面でも健筆を振るい、制御不能な新境地を開拓してください、藤森陽子さん!






 今日は冷蔵庫にプッチンプリンがある。帰ったらおやつに食べるんだ。宿敵である5歳離れた兄に奪われぬよう、マッキーの極太でプラスチックの容器に「ようこ」と大書する。ふふ、これで兄も手が出せまい。小4に対し敵は中3。体力、知力の差は歴然だが、きゃつはまったく大人げなく全力で挑んでくる。毎日がガチの戦いだ。
 授業中、愛しいプッチンプリンが何度も脳裏にフラッシュバックする。4時間目にはとうとう、皿の上でふるふると揺れる姿をノートに落書きし始めた。〝プッチン〟して食べる至福の瞬間をまる1日、一心不乱に考え続ける小4の春。この狂おしいほどの想い、ちょっとした恋のよう。
 そしていよいよ家に辿り着くと、あろうことか、先に帰っていた兄が我がプリンをモリモリと食べている。「ようこ」の文字など何の効力もない。衝撃、屈辱
……!!
「うわははは、兄ちゃんは身体が大きいから、陽子より沢山食べないとな」


Witchenkare vol.3「4つあったら。」(P080〜P083)より引用/写真:徳吉久
http://yoichijerry.tumblr.com/post/22651920579/witchenkare-vol-3-20120508

Vol.14 Coming! 20240401

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