2017/05/11

vol.8寄稿者&作品紹介11 円堂都司昭さん

前号では『オペラ座の怪人』について寄稿してくださった円堂都司昭さん。今回は『ノートルダムの鐘』(個人的な劇団四季版のミュージカル観劇が起点)についての考察です。同劇団はこれまでに『オペラ座の怪人』『美女と野獣』も上演しており、円堂さんはこれら<異形の男と美女の恋を描いたミュージカル>の共通/相違点も丁寧に検証しながら、現代における『ノートルダムの鐘』という作品の意味を読み解いていきます。

私にとっては『Rockin'on』関連でのご執筆(←同誌でも辺境扱い? されていたプログレにもしっかり詳しい...)がとくに印象深いのですが、前々回寄稿作で語られてもいるように、自身のキャリアの始まりは業界誌記者、そしてゼロ年代以降は文芸や社会評論へと活躍の場を拡げていらっしゃいまして、そんな円堂さんの書くミュージカルレビューは、視野が広い! たとえば作品中盤、四季版『ノートルダムの鐘』の舞台セットでの壁について説明し、すぐに<アメリカのトランプ大統領は、選挙戦の最中から、メキシコからの移民をせき止めるため国境に壁を建設すると公言し>と展開していくのですが、ぜひ劇団四季ファンの皆様にも本作が届けば、と願います。

...個人的にも、ある人間や事象を内と外/上と下で線引くこと(壁を顕在化させること)はあまり好きではないので、円堂さんが『ノートルダムの鐘』に託して語っている、昨今の社会情勢への懸念もぐっとくるものでした。内外上下は、まずそれを明言する側の価値観が顕在化してるんだよな〜(もちろん通念、みたいなものはぼんやりとあるんだけど)。ちょっと前に「首相のランチのカツカレーが高い!」ってメディアが煽って...では真に受けてマジで怒った人は、ランチをいくらで線引きするのか(じつは報じる側の人もけっこう同じようなカツカレーを...)? あっ、話がずれていく。

そして前回も似たことを書きましたが、今回もまた円堂さんの舞台劇等に対する総合的(豊饒)な楽しみかたを羨ましく思いました。ピンク・フロイド(やイエス)をシンガー・ソング・ライターの延長線上(で複雑怪奇に変型)としか捉えられない自分には聞こえない(見えない)ものを、きっと円堂さんはツアーのステージで受け止めていたんだろうな、と。



 アメリカのトランプ大統領は、選挙戦の最中から、メキシコからの移民をせき止めるため国境に壁を建設すると公言し、就任後はテロ犯の侵入阻止を掲げイスラム圏からの入国を制限する大統領令を発して騒動になった。自分たちのいる場所から異分子を排除しようとする保守的な態度と、人間の多様性を受け入れようとする寛容な態度の相克は、古くて新しい問題だ。『ノートルダム・ド・パリ』が『ノートルダムの鐘』へと脚色され、今も物語が生き残っているのは、異分子を排除するか包容するかというテーマが、現代的であり続けているからでもあるだろう。舞台上の壁は人を隔てる一方、扉を開けて受け入れもするのであり、排除と包容の両面を象徴している。

ウィッチンケア第8号<『ノートルダムの鐘』の壁>(P066〜P070)より引用
https://goo.gl/kzPJpT

円堂都司昭さん小誌バックナンバー掲載作品
『漂流教室』の未来と過去>(第6号)/<『オペラ座の怪人』の仮面舞踏会>(第7号)
http://amzn.to/1BeVT7Y

Vol.9 Coming! 20180401

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