2016/05/23

vol.7寄稿者&作品紹介29 西牟田靖さん

西牟田さんの小誌今号寄稿作でも、主人公の名前は冬岩五郎。前号に掲載した「報い」と同一人物か...作中に冬岩が<今は物書きや>と語る場面があるので、私はそう認識して読みました。冬岩が高校受験のさいに体験した、忌まわしい記憶についての物語だと。問題にされているのは「地元集中」という教育運動。ウィキペディアを鵜呑みは致しませんが、西牟田さんはこのことについて、中学2〜3年生の頃の冬岩、そして友人・的田や教師・夜田といった人物を絡ませながら描いています。

私自身は西牟田さんの作品を読むまで「地元集中」という言葉を知らずに生きてきましたが、しかし自身の高校受験を振り返ると屋や似た体験をしていて、というのも私は中学3年の二学期半ば、親の転勤の都合で転校したのですが、当時の担任から不自然なほど都立新設校の受験を勧められまして(って言うか「あなたはここしか受けられないから」みたいな強制)...ええと、いまなら当時の自分の状況、わかりますよ。こんな時期に転校してきた子、いくとこないまま卒業させると学校もマズイ、そして新設校には一定数送り込まなきゃいけない。ふむ。

昨年の西牟田さん紹介はご著書「本で床は抜けるのか」がすでに四刷、という時点でしたが、しかしその後も快進撃は続き、いったいいくつのメディアにインタビュー記事が掲載されたのでしょうか? ほんと、気がつくと西牟田さんの笑顔を拝見している、ということが多かったです。

中学時代のできごとを描いた後、物語は終盤一気に時空を越えて<卒業して30年後の10月10日、冬岩はK市立第一中学校の同窓会に参加した>という展開に。タイトルにある「謝罪」とはいったい? ぜひ小誌を手にして、結末をお確かめください!



「なんで、あんな奴らのためにオレらが犠牲にならなあかんねん」
「ほんまやでまったく」
「今年中学入ったら入ったでガラス割れてるわ、上から水は落ちてくるわ、なんかムチャクチャやな」
「オレもグレたろかな」
「ホンマやな」
 二人はK市立第一中学校の2年生。
 冬岩は好きなことにだけは夢中で取り組む、むらっ気のある生徒であった。小学校の卒業文集では「総理になって領土問題やエネルギー問題を解決する」と書いたりするなど、政治や世界の地理に興味を持っていた。中学に入学する前は勉強する気満々だったが、入学してみると、屋上から水が降ってきたり、体育祭では「おしっこ」と連呼させられたり。しかも授業はいつまでも進まない。そうしたことから彼は、授業に興味を失い、成績は伸び悩み、中の上といったところ。口数も少なくなり、内向的な少年として、育ちつつあった。
 一方、的田はというとクラスで1、2を争う成績優秀な生徒。柔道をやっていて、年齢の割にはずいぶん立派な体格をしている。文武両道を地で行く、模範的な少年であった。

ウィッチンケア第7号「30年後の謝罪」(P166〜P171)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7
西牟田靖さん小誌バックナンバー掲載作
「報い」>(第6号)
http://amzn.to/1BeVT7Y

Vol.9 Coming! 20180401

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