2016/05/10

vol.7寄稿者&作品紹介10 太田豊さん

「初回デート費用=男性が全て払う」...って、これは小誌第7号の<参加者のプロフィール>欄の、太田豊さん枠より引用。たぶん、作品内に登場する<某婚活系アプリ>と関連した自己紹介なのかと推察しますが、残念ながら私はその方面に疎いので確かめようもなく。でっ、いま、テレビなんか見ると「デートで割り勘は当たり前」なんて言ってますが、ほんとですか? あと「音楽はタダで聞くのが当たり前」とか「インターホンが鳴っても無視するのが当たり前」とか。当たり前も世に連れ...ほどなく飲酒して公共交通機関使ったら逮捕されそうだな。

「日々から日々へ」(←デヴィッド・ボウイの「Station to Station」由来?)は五三歳のオオタさん(もちろん偽名、とのこと)の婚活物語なんですが、けっこうたいへんそうです。というのもこのオオタさん、神保町の東京堂で詩の同人誌を買ったり、音楽ではヘンリー・カウ周辺に造詣が深かったり、と、まあ愛を込めつつ敢えて言えば「こじらせ系おじ(い)さん」。しかも、このオオタさんが婚活をする理由は「子供が欲しい」。ちなみに前掲のプロフィール欄には「子どもの有無=別居中」との記述も見当たります。

このオオタさん、日々アプリで女性会員のプロフィールを見て、シングルマザーの大変さに胸を痛めたり、海外旅行とディズニーランドの人気に意気消沈したり。ついには別の出会い系サイトに一五歳ほどサバを読んで登録したものの、「87Fカップ150cm歯科助手です☆」なんて文言に辟易して「こりゃ業者とシロウト売春の巣窟かな?」と思ったり。

そんなこんなの果てにこのオオタさん、28歳のほのかさんと縁があって実際に会うわけです。この後の展開は、ぜひ本編でお楽しみいただきたいのですが、しかし作品終盤の「セックスを覚えたてのころ、外へ出たときに、みんなこんなことやってるのかという驚きで、街や人が違って見えたことを思い出す」という一節は、序盤にある「見ることそのものへの驚き」という一節とも響き合って、ぐっときました。センシティヴな感性で年を重ねるこのオオタさんに、幸あらんことを!



 あからさまに美女だという人は美容関係の仕事が多く、口々に出会いのなさを嘆いている。投資信託会社の回し者や、男性に夢を与えるだけの役回りを演じる「業者」もまぎれこんでいるようだ。
 胸を打つのは、シングルマザーの大変さだ。幼い子供ふたりと仲よさげに写っている女性の年収が二〇〇万円以内だったりする。本人も、そうした条件がある自分が男性から選ばれにくいことを承知で登録してきている。「本気で相手を探しているので、遊びの方はお断りです」というコメントが胸に刺さる。子供が好きなんだったら、この人とつきあってみればいいではないか、という問いが自分にも突きつけられているようだ。つきあってみて子供がふたりいることがわかるのと、最初から子供がふたりいることを知ってコンタクトをとることとはどこが違うのか。

ウィッチンケア第7号「日々から日々へ」(P058〜P066)より引用
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Vol.14 Coming! 20240401

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